院長コラム

当院の紹介状況ー患者さんにとって最適な紹介とは


来院された患者さんで手術が必要となった方に最良の治療を受けて頂くため、当院では院長自身ネットワークや臨床及び手術経験からその病気に最適なドクターに治療をお願いしています。大部分の患者さんは、広島市内の有名な脳神経外科のドクターに治療をお願いしていますが、中には以下の理由で過去に京都大学やその関連病院のドクター、京都大学以外の有名なドクターに治療をお願いしたケースがあります。
 ①病気が特殊で市内で治療が困難な方②患者さんの強いご希望③お子様が遠方におられ、お子様の近くの名医に治療を希望された。
 等がその理由となります。患者さん個人個人で様々なお考えがあります。この様な場合はどうぞ遠慮なくご相談下さい。

疾患と適切な治療期間について


診療機関(病院等)へ受診して、診断名が決まり治療が開始になります。急性疾患では、手術が必要か飲み薬で治るか判断されます。しかし、下記の様な慢性疾患になるといつまで通院すれば治るか気になるところです。
かつて昭和から平成になる時期、慢性疾患に対して患者さんに説明なしに、まんぜんと治療が継続されていた診療科や疾患もあった事は事実です。その多くの場合患者さん自身が一応症状が改善し、更に治療を継続する事に嫌気がさして中断する事が殆どでした。当時は病気の本態や、治療に対する科学的な根拠(証拠に基づいた治療)が不確かなものが多かったのも事実です。
しかし最近は、科学的根拠に基づきはっきりとした治療方針で治療にあたる事が出来る様になりました。以下当院でどの様に病気を考え、治療方針を立てているかを説明します。
①無症候性脳梗塞(症状のないもの):梗塞巣の大きさや脳の主要な血管の細さ、生活習慣病の有無や家族歴により色々なバリエーションが考えれます。基本的には梗塞巣の長径が10mm以下で主要血管が正常な場合は、MRIを定期的に撮影すれば治療の必要はありません。梗塞巣が10mm以上の場合、加えて脳の主要血管が細ければ、なおのこと、将来手足の麻痺、言語障害や認知症になる可能性がありますので、生涯にわたり予防薬の治療が必要です。予防薬を飲んでいれば1/5~1/10程度危険性が少なくなります。
②動脈瘤破裂によるくも膜下出血術後(開頭術や血管内手術術後):基本的には治療の必要ありません。くも膜下出血は、最初の手術が後遺症を左右します。術後は危険因子の高血圧症の治療と禁煙が必要です。動脈瘤の再発(0.3%以下)の確認と脳梗塞等ほかの脳卒中の罹患率が一般の方より高い為、年に一度の頭部MRIの検査が必要です。
③脳内出血後遺症:出血の原因のほとんどが高血圧症です。血圧の管理が一番大切です。この為、生涯にわたり高血圧症の治療が必要です。ただ前のコラムでも書きましたが、高血圧症は場合により食事や運動療法、減量で改善でき、薬を飲む必要がなくなります。
④癲癇:癲癇の治療は、抗痙攣剤を飲みながら発作が消失し脳波が正常化し、3年間経過後に抗痙攣剤を1年間かけて減量~休薬し、脳波が正常化していれば薬を中止する事が出来ます。

これから益々知ることが必要な事


①健康食品-サプリメント(本当に効き目はあるでしょうか?):判定×健康食品の定義ははっきりしませんが、国(厚生労働省)が、健康維持や病気回復に効果がある薬品として認めてないものと考えます。この中には様々なレベル(品質)のものが混じっていると考えられます。作っている企業も一流から三流の製品があると思われます。ここではっきり言いたい事は、健康食品は健康維持や病気回復の為に科学的に証明されていないものと言えます。仮に本当によい物なら厚生労働省も薬品として認めるはずです。また医師も病院で使用できます。したがって健康食品はお勧めできません。また、万が一健康食品で副作用が出た場合一流企業でないと補償がもらえない可能性もあります。本当に注意して下さい。
②ジェネリックは今までの薬と同じですか?判定×薬は化学製品です。その為、製品を製造する段階で化学反応します。ジェネリックは既存の薬と同じ成分ですが、この化学反応の過程が全く違っている為(既存製薬会社の極秘事項)同じ製品、言い換えれば薬効が同じではありません。事実、私も患者さんの御希望で、抗痙攣剤をジョネリックに変更して癲癇発作が再発した苦い経験があります。厚生労働省もその事を充分知りながら、国民の医療費削減の為販売促進運動をしています。テレビコマーシャルで、一流のタレントを使用して二流の薬が販売されています。タレントも医療に無知で可愛そうです。また上記の様にジェネリックを製造している会社も一流から三流に分かれます。皆さんが食品を買われる際に、国産か中国産かを注意されるのと同じ様にジェネリックの会社の知識も持たれる必要があります。特に、降圧剤や抗痙攣剤など大げさではなく命に関わる薬には注意を要します。医師が何故安価な薬を使用しないかの理由はここにあります。

迷信と本当の話 (それって本当なの?)


  日常診療でよく耳にする話があります。患者さんに聞きますと、おもに友達同士で話題になっている事(健康状態や飲み薬)をお互いに共有され、勝手な判断や誤解から話が間違って伝わっている事があります。患者さん同士での疑問点があれば、何でも御質問下さい。このコラムでは、そんな誤解されている話について解説を加えます。わかりやすくする為、箇条書きにしてみます。

①睡眠薬と認知症:ⅰ患者さんが睡眠薬を飲むと呆けるから飲みません。ⅱ睡眠薬より安定剤の方が安全なので飲んでいます。ⅲ副作用が恐いので半錠にして飲んでます。などをよく耳にします。
ⅰについてー判定× 全ての薬は飲まないに越した事はありません。特に睡眠薬は、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型と作用時間に大きな差が有り、慎重に睡眠薬の種類を選ぶ事が重要でしょう。長時間型の睡眠薬(心療内科で精神疾患等で特に睡眠治療を必要とする人の為の薬)の連用と認知症は関係が有る様です。しかし、脳神経外科や内科の診療で投薬する睡眠薬は、超短時間型から中間型の薬の為認知症になる事はありません。事実薬の副作用報告書にも認知症の記載はありません。むしろ認知症の危険因子(原因と考えられるもの)に不眠症がありますから、長時間型の睡眠薬でなければむしろ認知症の予防になります。したがって普通の睡眠薬を飲んでも呆けません
ⅱについてー判定×副作用の報告は、睡眠薬より安定剤の方が多いのが現状です。また本来、安定剤は精神を安定させる薬で睡眠を誘導する作用はありません。より安全でしかも睡眠導入に適した睡眠薬を飲む事をお勧め致します。
ⅲについてー判定△日本の錠剤は、日本人の体格に合わせて大きさが決まっています。例えばアメリカの錠剤の分量は、日本の錠剤の倍量です。ですから、日本ではわざわざ半錠で飲む必要はありません。但し体重が40kg未満の方や細身で高齢の方は、主治医に相談され錠剤の大きさを調節されても良いと思います。
②水一杯と脳梗塞:判定△このコラムの高齢者と脱水症を御参照下さい。脳梗塞後遺症の方など特に脱水症の予防が大切な方は寝る前に水1杯飲まれる事に賛成です。
③降圧剤(高血圧の薬)をいったん飲むと一生の薬:判定×これは明らかに間違っています。降圧剤を服用しながら、例えばダイエット(10kgのダイエットで血圧は10mmHg下がると言われています)や運動や減塩食を継続すると血圧は下がり、降圧剤を服用する必要がなくなります。この話で、多くの人が勘違いしているのは、糖尿病の薬を飲み始めると一生治療が必要という事との混同です。糖尿病の治療をはじめると、膵臓から血糖値を下げるインスリンの分泌が減少して薬に依存する体に変わるので一生薬が必要です。ただし、軽症の糖尿病の場合、インクレチン製剤と言って元来体の中にあるホルモン物質の製剤があり、この薬は食後の血糖値に応じたインスリン分泌を促進し膵臓にダメージを与えないので、運動や食事療法で血糖値が改善すればこの薬の休薬や中止は可能です。
④血液サラサラの薬と納豆:判定ほぼ×血液サラサラの薬の中には、抗血小板剤や抗凝固薬があります。脳梗塞や心筋梗塞の慢性期で服用して頂いている薬は、殆どのケースで抗血小板剤です。この薬は食事の影響を受けません。納豆は食べれます。しかし、脳梗塞の患者さんの中に、心房細動(心臓の脈が一定でない疾患)が原因の方は普通ワーファリン(抗凝固剤)を服用されています。ワーファリンは食事の影響を受けやすい薬で、血中濃度を一定にして治療効果をあげる為、納豆は食べれません。
⑤降圧剤とグレープフルーツ:判定ほぼ×上記④と同様で高血圧の薬の種類で異なります。高血圧症の薬は以前はカルシウム拮抗剤が一番多く使われその中のある種の薬が、グレープフルーツと反応して効果が強く出ることがあります。それ以外の高血圧の薬は食事に制限がありません。ですから、気になる場合は薬剤師か医師に相談されグレープフルーツと反応しない降圧剤に変更して頂きましょう。そうすれば食べれますよ。


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